あ》も眠くなりぬ

短夜の淺きがほどになく蛙ちからなくしてやみにけらしも

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夜半月冴えて杉の梢にあり
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小夜ふけて厠に立てば懶げに蛙は遠し水足りぬらむ

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六月一日、あたりのもの凡ていまさらに目にめづらしければ出でありく
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麥刈ればうね間/\に打ちならび菽は生ひたり皆かゞまりて

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幼きものゝ仕業なるべし
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垣根なるうつ木の花は扱き集《つ》めてぞろりと土に棄てられにけり

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夕近くして雨意おほし
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雨蛙しきりに鳴きて遠方の茂りほの白く咽びたり見ゆ

いさゝかは花まだみゆる山吹の雨を含みて茂らひにけり

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二日、雨戸あくるおとに目さむ
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おろそかに蚊帳を透かしてみえねどもしづく懶く外は雨なりき

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やがてしげくふりいづ
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つく/″\と夏の緑は快き杉をみあげて雨の脚ながし

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泥のぬ
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