ろほがらになりにけり夏は必ず我れ死なざらむ
鍼の如く 其の三
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六月九日夜、下關の港にて
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うつら/\髪を刈らせて眠り居る足をつれなく蚊の螫しにけり
鋏刀もつ髪刈人は蚊の居れどおのれ螫さえねば打たむともせず
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四日間の旅を經て十日といふに博多につく、十一日朝、千代の松原をありく
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夏帽の堅きが鍔に落ちふれて松葉は散りぬこのしづけきに
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十二日
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※[#「巾+廚」、第4水準2−12−1]の中に瞼《まなぶた》とぢてこやれども蚊に螫され居し足もすべなく
蚊の螫しゝ足を足もてさすりつゝあらぬことなどおもひつゞけし
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十四日
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脱ぎすてゝ臀のあたりがふくだみしちゞみの單衣ひとり疊みぬ
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此の夜いまさらに旅の疲れいできにけるかと覺えられて
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ちまたには蚤とり粉など賣りありく淺夜をはやく蚊帳吊らせけり
低く吊る※[#「巾+廚」、第4水準2
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