よみおきけるが、今は梢のさやぎも著しく
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窓掛はおほにな引きそ梧桐の嫩葉の雨はしめやかに暮れぬ
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藁蒲團のかたへゆがみたるに身を横たふることも、餘りに日のかさなればその單調なるにたふべくもあらず、まして爽かなる夏の既に行きいたれゝば
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梧桐の夏をすがしみをり/\は疊の上にねまく欲りすも
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熱少したかけれどもたま/\出でありくこともあり
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あかしやの花さく蔭の草むしろねなむと思ふ疲れごゝろに
鍼の如く 其の二
一
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五月二十二日夜、こゝろに苦惱やみがたきこと起りて眠遂におだやかならず
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小夜ふけてあいろもわかず悶ゆれば明日は疲れて復た眠るらむ
おそろしき鏡の中のわが目などおもひうかべぬ眠られぬ夜は
よしといへば水には足はひたせどもいたづらにして小夜ふけにけり
すべもなく髪をさすればさら/\と響きて耳は冴えにけるかも
やはらかきくゝり枕の蕎麥殼も耳にはきしむ身じろぐたびに
ゆくりなく手
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