から6字下げ]
草の花はやがて衰へゆけども、せめてはすき透りたる壜の水のあたらしきを欲すと
[#ここで字下げ終わり]
いさゝかも濁れる水をかへさせて冷たからむと手も觸れて見し
[#ここから6字下げ]
いつの間にか、立ふぢは捨てられ、きんせんはぞろりとこぼれたるに、夏の草なればにや矢車のみひとりいつまでも心強げに見ゆれば
[#ここで字下げ終わり]
朝ごとに一つ二つと減り行くに何が殘らむ矢車の花
俛首れてわびしき花の※[#「耒+婁」、第4水準2−85−9]斗菜《をだまき》は萎みてあせぬ矢車の花
風邪引きて厭ひし窓もあけたればすなはちゆるゝ矢車の花
快き夏來にけりといふが如まともに向ける矢車の花
[#ここから6字下げ]
五月十日、復た草の花もて來てくれぬ、鐡砲百合とスウヰトピーなり、さきのは皆捨てさせて心もすが/\しきに[#「すが/\しきに」は底本では「すが/″\しきに」]、いつのまにか大きなる百合の蕾ひそかに綻びたるに
[#ここで字下げ終わり]
心ぐき鐡砲百合か我が語るかたへに深く耳開き居り
[#ここから6字下げ]
十一日の夜に入りはじめて百合のかをりの高きを聞く、此夜も
前へ
次へ
全44ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング