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草の花はやがて衰へゆけども、せめてはすき透りたる壜の水のあたらしきを欲すと
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いさゝかも濁れる水をかへさせて冷たからむと手も觸れて見し

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いつの間にか、立ふぢは捨てられ、きんせんはぞろりとこぼれたるに、夏の草なればにや矢車のみひとりいつまでも心強げに見ゆれば
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朝ごとに一つ二つと減り行くに何が殘らむ矢車の花

俛首れてわびしき花の※[#「耒+婁」、第4水準2−85−9]斗菜《をだまき》は萎みてあせぬ矢車の花

風邪引きて厭ひし窓もあけたればすなはちゆるゝ矢車の花

快き夏來にけりといふが如まともに向ける矢車の花

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五月十日、復た草の花もて來てくれぬ、鐡砲百合とスウヰトピーなり、さきのは皆捨てさせて心もすが/\しきに[#「すが/\しきに」は底本では「すが/″\しきに」]、いつのまにか大きなる百合の蕾ひそかに綻びたるに
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心ぐき鐡砲百合か我が語るかたへに深く耳開き居り

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十一日の夜に入りはじめて百合のかをりの高きを聞く、此夜も
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