豆腐汁、麥飯
 先生の遺稿閲覽期日今日にて盡く、更に見返して送る、
 火鉢の側にてホトトギス六七册披き見る、九月十四日の朝の記くり返し/\見る、
 母、妹、下女スミツカリを拵へる、これは大根下しと熬り豆と、酒糟と、酢醤油とで煮たものである、初午にはこれと赤飯とがつき物である、
 藁苞十ばかりを作つてスミツカリを入れてうらの稻荷や氏神へ供へる、表の廂へも二つ投げ上げる、
 晝飯、小豆飯、スミツカリ、卵のふわ/\、
 土間では餅つき、明日のお天念佛に念佛衆へやるのださうだ、
 おせいとおふくが妹へ白足袋二足つゝ[#「つゝ」に「ママ」の注記]持つてきた、
 久々で友人を訪ねた、
 椚林のなかを過ぎて隣村の隣村である、在宅、鉢植の梅が疊の上に散らばつて青い枝が下を向いて居る、この友人といふのは理科大學の生徒であつたが助膜炎を患へてから退いて静養しつゝあるのである、
 近ごろ獲たのだといつて鷄の膓から出た絛蟲と、絛蟲の棲息して居た膓の内壁と、ホウボウの頤に居た寄生蟲との三つを罎に漬けたのを見せられた、いづれも自分には珍らしいがホウボウの寄生蟲の大なること一寸許なるに至つては驚かさる[#「さる」は
前へ 次へ
全19ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング