を三本立てゝ上の所を一つに結ぶ、これはけふの祭りの例である、うちの福の神樣がけふ表から出て行くのださうである、十二月になると裏から歸るので笹も裏へ立てる、この笹を立てるので笹神祭と呼んで居る、麥飯を焚いてこの笹の上へ供へまつるのである、
 夜母下妻より歸る、妹の婚姻に就いて用意のためけさ行つたのである、
『ウコギバラ』と五加木と同じものかどうかと思つてランプの下で歳事記を披いて見る、五加木といふものは自分は見たことがないからである、
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春、うの部
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〔二月〕 五加木 〔蘇頌圖經〕五加木、春苗を生じ、莖葉共に青し、叢をなす、
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 とある、別物であらう、
 朝、茶の子餅、餡鹽の如し、
 晝、卵子燒、
 夜、麥飯に冷汁をかけて喰ふ、里芋、
 牛乳二合、
 足長蜂の巣のやうな三椏の蕾ひらく、
 庭とこの芽外皮を破り相對して延ぶること五分、中に花を抱く、
 麥ます/\青し、

 七日、土曜、快晴、西風吹く、
 珍らしく霜柱立つ、梅花二三片散りたるおもしろし、
 松葉を拂ひたるため庭あらたなる心地す、
 朝飯九時過ぎ、鮒の甘露煮、
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