十日間
長塚節
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「均」のつくり、第3水準1−14−75]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぶら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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三月二日、月曜、晴、暖、
起床平日よりはやし、冷水浴、
宵に春雨が降つたらしく屋根が濕つて居る、しかし雫する程ではない、書院の庭にしきつめてある松葉は松もんも[#「松もんも」に傍点]が交つてるので目障りであるがけさは濡れて居るからいかにも心持がよい、庭下駄を穿いてぶら/\とあるく、平氏門に片寄つてさうして戸袋にくつゝいた老梅が一株は蕾がちで二株は十分に開いて居る、蕾には一つづゝ露が溜つてその露が折々松葉の上に落ちる、五片六ひら散つて松葉にひつゝいてるのが面白い、まだ散る頃ではないから大方春雨の板面であらう、空は西の方から拭つたやうに靄が禿げて日の光が竹林の上から斜にさしかゝると、溜つて居る露がかゞやいて落ち
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