るたびにゆら/\と搖れる、子供のするやうに人指し指を曲げてその背へ蕾にかゞやいて居る露をとつて見た、こんな心持のよい朝はない、はやく起きたのが嬉しくつてたまらなかつた、即興の歌が八首、七首は立どころに成つて一首は少し苦んだ、
 村の役場へ納めに行く、いま使をやつたのだが逢はなかつたといふのである、この使は納めの催促である、小使の婆さんが安火へ火を入れて呉れた、茶菓子を買ふ、ひつこき[#「ひつこき」に傍点]、ねぢり棒[#「ねぢり棒」に傍点]など、婆さんに少しばかり錢をやる、いらないといふとれといふ、何遍かお辭誼をした、
 正午少し過ぎ歸る、
 馬方二人筑波下から瓦をつけて來る、
 隣村の役場へ納めに行く、赤十字社や色々な雜誌が封じた儘箱の上にのつてある、見るものゝないのがわかる、農業雜誌を借りて歸る、菓[#「菓」に「ママ」の注記]物だの草花だのゝ廣告が面白いからである、
 分家の鷄が門の畑の蕪菜を荒すので垣根をゆひ直すそれでも止まない、一つひどい目を遇はしてやらうと思つてぐる/\追ひまはした、分家の厩のうしろの麁朶の中へ一羽逃げ込んだのがある、拔足して行つて棒でしたゝか突いた、空腹を感ず
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