ママ]を得ない、どこに居ても研究の材料はあるのだがなか/\思ふやうに研究ができないと言はれた、
 草餅を馳走珍らし、
 夕方になつて歸る、
 夜麥蕎、
 うら庭の木瓜蕾ふくらみて赤く、桔梗は紫に、わすれ草は青く萠ゆ、霜掩の下に牡丹の芽のぶること一寸五分、

 八日、日曜、曇、折々日光を見る、寒し、
 昨夜よく眠らず明方うと/\として醒む、朝のうちに皆葉へ用足しに行く、不在、
 郵便秀眞より封書、狂体十首を評したのである、夜一時十五分擱筆とある、徹夜することがたび/\であるさうだ、蕨より一つは先生の遺稿二號、一つは嚴君床上げの祝をしたといふはがき、
 午後勝手元賑か、お天念佛の衆へ五目めしをおくるためである、
 うしろの坪に念佛の大鼓が聞える、この日爺婆若返つて騷ぐためしである、
 日のあるうち風呂に入る、きのふ初午にて風呂を立てないのが例なのでけふは早くたてたのだ、
 足の甲を爪でゴリ/\掻く、牛の舌のやうにサヽクレ立つ、
 夜月明かにしてまた雲掩ふ、皆葉へ行く用足る、
 明日他出の用意、脚絆、足袋、
 朝牛乳、晝小豆飯とヤマべ一串、夕五目めし、
 この日はじめて鶯を聞く下手なり、


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