馬でもそこに居るもんですがね、
獵師の話は嘗て自らした伯樂のことに移る、路の傍には二抱三抱の楢の樹が聳えて、下には山吹が簇つて青い枝が交叉して居る、
小さな坂を幾つか越したり、駒除のそばを過ぎたりして再び大北川の流に達した、橋がある、こつちに石を積んで、向うにも石を積んで、大きな杉の板が二枚ならべて水面に近く架け渡してある、水には夥しく鋸屑が交つて流れる、橋を渡ると杉の五分板をつけた馬が五六匹揃つて來た、河原礫の上に立つて暫く馬を避けた、岸へ上ると山桑の老木がならんで居て、老木の下の枯芝には火が二坪ばかり燃え廣がつて居る、馬士供の板面である、
段々行くとシユウツ/\といふ音が聞える、水車小屋の中から響くのである、小屋へはいつて見た、機械で木材を挽くのである、外で大きな水車が廻轉すると、小屋の中の齒車がめぐる、他の車がめぐる、車から車へかけた袈裟のやうな象皮は中央の丸い鋸をめぐす、人が鋸をさし挾んで居る、鋸の傍には四角な柱が建てゝある、榾を鋸へあて、こちらから押す、さきで取る、瞬く間に一枚挽ける又挽ける、榾はいつでも柱へ密接せしめてあるので板は常に柱と鋸との間だけの厚さに出來る、榾
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