才丸行き
長塚節

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)魚扠《やす》で

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+牙」、第4水準2−14−40]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)すい/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

 起きて見ると思ひの外で空には一片の雲翳も無い、唯吹き颪が昨日の方向と變りがないのみである、
 滑川氏の案内で出立した、正面からの吹きつけで體が縮みあがるやうに寒い、突ンのめるやうにしてこごんだ儘走つた、炭坑會社の輕便鐵道を十町ばかり行つて爪先あがりにのぼる、左は崖になつて、崖の下からは竹が疎らに生えて居る、木肌の白い漆がすい/\と立ち交つて居る、漆の皮にはぐるつとつけた刄物の跡が見える、山芋の枯れた蔓が途中から切れた儘絡まつて居る、
 小豆畑といふ小村へ來た、槎※[#「木+牙」、第4水準2−14−40]たる柿の大木は青い苔が蒸して幾本となく立つて居る、柿の木の下には小區域の麥が
次へ
全10ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング