と共に水の中へ落ちた、
曩きのやうに右手の麓について進む、足へぽく/\と觸はるものがある、振り囘つて見るとあとから犬が來る、犬の鼻の尖が觸はるのであつた、獵師のうちの一人が蹤いて來た、狐色の筒袖の腰きりの布子で、同じ色の股引を穿いて居る、黎黒な肌に光りのある顏の五十格恰の巖疊な親爺である、犬は遙かのさきへ行つた、
對岸の山の中程には炭竈の煙が枯木の梢をめぐつてこちらに靡いて居る、もう程なく燒け切るといふ鹽梅に淺黄の煙である、
「此奧でしたか狸穴といふ所がありましたな、私等が貉を掘りに行つたことがありました、二匹捕つて三匹目の奴が出て來たのを、手で捉へちや喰ひ付かれるといふので木挽の斧でぶんなぐつたら、すつと引つ込んぢまつて夫れつ切り出て來ない、居るも居る三日三晩ばかり燻ぶしたがとう/\出ない、居ねえ筈は無いと思つたが辨當は無くなるし、夫れ切りで歸りましたが、腰越の獵師等がその趾を掘つて五つ捕つた相でした、穴の口から少し下つて一匹死んで居たといふ話です、
滑川氏が獵師に話し掛けた、
「さう仰しやればあすこには幾ら居たか知れねえんです、いつかもそんなことが有つたんですが、貉といふ奴は
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