る。それと同時に女の一人位は拵へるのである。例令そんなことが無いにしても同年輩の誰彼と屹度夜遊に出掛ける。それがだん/\募つて來ると村の隅から隅までふら/\と押し歩いて小娘でもある家の風呂を覗くといふやうになる。兼次も年頃來た時には自然夜遊に屈託した。さういふ場合に兩親はどうするかといふと、自分が以前に其覺えがあつて格別惡いことゝも思はないし一向平氣といふのではないが仕方がないといふ位なものだ。それだから繩の一|房《ぼう》も綯ひ出すとか朝草の一籠も餘計に刈るとか仕事に差支がなければ怪我に一言もしみ/″\した小言などはいはぬが普通である。兼次が夜遊に屈託した頃兼次の家からでは離れて居るが同じ村のうちで幾らか暮しの樂な因業者の夫婦があつた。代々其家は仙右衞門といつたので其が訛つて「センネモドン」と呼ばれて居た。何時の間に誰が教唆したか所謂小若い衆と稱する兼次等の仲間が其家に惡戲をはじめた。丁度霜が二三度おりた頃で宅地へなつた柿で串柿を拵へて日南の壁へ吊したのがあつた。串柿は下で胡麻の殼を焚けばいつの間にか落ちて了ふといふので或夜そつと其串柿を外して散々いぶして復たそつと掛けて置いた。案の如
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