こと貰つちやつたらどうだ」
「此めえ親類うちから世話されたこともあんだが檢査めえだからつて斷つたんだから其方へ對したつて貰あ所の騷ぎぢやねえ」
「徴兵檢査ツてゆつてもあと三十日が四十日で大概《てえげえ》どうか極らな、そんで兵隊に出たにした所で兩方で極めてだけ置く分にや差支あんめえ。そんなことゆふな理窟つちいものぢやねえか」
「おらどうせ馬鹿だから構はねえが、どうしたつてうんたあ云はれねえ」
「酷くをかしなこといふんだな、そんぢや外に氣にらねえことでもあんのか」
「氣にらねえたつて餘まり人を馬鹿にしべえと思ふんだ。おらぢの野郎が甘口だつて何もお袋まで一緒になつて人の相續人に障るやうなことして呉れねえでもよかんべと思ふんだ。おらどうせ馬鹿だから理窟なんざあ解らねえがさうぢやあんめえか。此間だつて兼が出だす晩にも後で氣がついて見りや裏の垣根《くね》のあたりに二人ばかりうろ/\して居たんだがおらちやんと見當がついてんだ。それぢやおれだつていめえましかんべえ。なあにあんな野郎うちに居なけりや居ねえたつて困らねえから、云ふこと聽かなけりやぶち出すだけだ。おれ幾ら體が弱つたつてあら位な小わつぱにやま
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