でした。女はどうしても手術をうける気はありませんでした。手術をうけないうちに死んでゆくのだとあきらめているからでした。医者はそれでもあきらめずにもう一度いってみました。
けれども女は、
「わたしはこのまま安らかに死んでゆきとうございます。」
といいました、そしてまた消えてゆくような声で、
「奥さま、わたし[#「わたし」は底本では「わたく」]の荷物と、この少しばかりのお金を家の者に送ってやってください、私はこれで死んでゆきます。どうぞ私の家へ手紙も出して下さい。わたしは子供を忘れることが出来ません。小さい子のマルコはどうしているでしょう、ああマルコが……」
といいました。
その時、主人もいませんでした。奥さんはあわただしくかけてゆきました。しばらくすると医者はよろこばしい顔をしてはいってきました。主人も奥さんもはいってきました。[#「。」は底本では欠落]そして病人に、いいました。
「ジョセハ、うれしいことをきかせてあげるよ。」
「おどろいてはいけません。」
女はじっとその声をきいていました。
奥さんは
「お前がよろこぶことですよ、お前の大そう可愛がっている子にあうのですよ。」
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