るのです。おかあさんにあわないで、死んでしまいそうだ。」
「まあ可愛そうに、ここから四五百|哩《まいる》はなれていますよ。」
 女の人は気の毒そうにいいました。
 マルコは顔に手をおしあてて、「わたしはどうしたらいいのだろう、」
 といって泣き出しました。
 女の人はしばらくだまって考えていましたが、やがて思い出したように、
「ああ、そうそう、よいことがある、この町を右の方へゆくと、たくさんの荷車を牛にひかせて明日ツークーマンへ出かけてゆく商人がいますよ。その人に頼んでつれていってもらいなさい。何か手つだいでもすることにして、それが一番よい今すぐに行ってごらんなさい。」
 といいました。
 マルコはお礼をいいながら[#「いいながら」は底本では「いいならが」]ふくろをかつぎ急いで出かけました。しばらくゆくとそこには大ぜいの男が荷車に穀物のふくろをつんでいました。丈《せい》の高い口ひげのある男が長靴をはいて仕事の指図をしていました。その人がこの親方でした。
 マルコはおそるおそるその人のそばへ行って「自分もどうかつれていって下さい。おかあさんをさがしにゆくのだから。」
 とたのみました。

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