上げてみると、それは船の中で一しょになった年よったロムバルディのお百姓でありました。
 マルコはおどろいて、
「まあ、おじいさん!」
 と叫びました。
 お百姓もおどろいてマルコのそばへかけて来ました。マルコは自分の今までの有様を残らず話しました。
 お百姓は大変可愛そうに思って、何かしきりに考えていましたが、やがて、
「マルコ、わたしと一緒にお出でどうにかなるでしょう。」
 といって歩き出しました。マルコは後について歩きました。二人は長い道を歩きました、やがてお百姓は一軒の宿屋の戸口に立ち止りました。看板には「イタリイの星」と書いてありました。
 二人は大きな部屋へはいりました。そこには大勢の人がお酒をのみながら高い声で笑いながら話しあっていました。
 お百姓はマルコを自分の前に立たせ皆にむかいながらこう叫びました。
「皆さん、しばらくわたしの話を聞いて下さい、ここにかわいそうな子供がいます。この子はイタリイの子供です。ジェノアからブエーノスアイレスまで母親をたずねて一人で来た子です。ところがこんどはコルドバへ行くのですがお金を一銭も持っていないのです。何とかいい考えが皆さんにありま
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