せんか。」
 これをきいた五六人のものは立ち上って、
「とんでもないことだ。そんなことが出来るものか」
 といいました。するとその中の一人は、テエブルをたたいて、
「おい、我々の兄弟だ。われわれの兄弟のために助けてやらねばならぬぞ。全く孝行者だ。一人できたのか。ほんとに偉いぞ。愛国者だ、さあこちらへ来な、葡萄酒《ぶどうしゅ》でものんだがよい。わしたちが母親のところへとどけてあげるから心配しないがよい。」
 こういってその男はマルコの肩をたたきふくろを下してやりました。
 マルコのうわさが宿屋中にひろがると大勢の人たちが急いで出てきました、ロムバルディのおじいさんはマルコのために帽子を持ってまわるとたちまち四十二リラのお金があつまりました[#「あつまりました」は底本では「あつりまりました」]。
 みんなの者はコップに葡萄酒をついで、
「お前のおかあさんの無事を祈る。」といってのみました。
 マルコはうれしくてどうしてよいかわからずただ「ありがとう。」といって、おじいさんのくびに飛びつきました。
 つぎの朝マルコはよろこび勇んでコルドバへ向って出かけました。マルコの顔はよろこびにかがやきま
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