つけました。
 マルコはベルをならすと家から髪の毛の赤い意地の悪そうな男が出てきて
「何の用か、」
 とぶっきらぼうにいいました。
 マルコは書いてもらった手紙を出しました。その男はその手紙を読んで
「主人は昨日の午後ブエーノスアイレスへ御家の人たちをつれて出かけられた。」
 といいました。
 マルコはどういってよいかわかりませんでした。ただそこに棒のように立っていました。そして
「わたしはここでだれも知りません。」
 とあわれそうな声でいいました。するとその男は、
「物もらいをするならイタリイでやれ、」
 といってぴしゃりと戸をしめてしまいました。
 マルコはふくろをとりあげてしょんぼりと出かけました。マルコは胸をかきむしられたような気がしました。そして
「わたしはどこへ行ったらよいのだろう。もうお金もなくなった。」
 マルコはもう歩く元気もなくなって、ふくろを道におろしてそこにうつむいていました、道を通りがかりの子供たちは立ち止ってマルコを見ていました。マルコはじっとしておりました。するとやがて「おいどうしたんだい。」とロムバルディの言葉でいった人がありました。マルコはひょっと顔を
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