水の上や遠い岸を銀色に照しました、マルコの心はしんとおちついてきました。そして「コルドバ」の名を呼んでいるとまるで昔ばなしにきいた不思議な都のような気がしてなりませんでした。
 船頭は甲板に立ってうたをうたいました、そのうたはちょうどマルコが小さい時おかあさんからきいた子守唄のようでした。
 マルコは急になつかしくなってとうとう泣き出してしまいました。
 船頭は歌をやめるとマルコの方へかけよってきて、
「おいどうしたので、しっかりしなよ。ジェノアの子が国から遠く来たからって泣くことがあるものか。ジェノアの児は世界にほこる子だぞ。」
 といいました。マルコはジェノアたましいの声をきくと急に元気づきました。
「ああそうだ、わたしはジェノアの児だ。」
 マルコは心の中で叫びました。
 船は夜のあけ方に、パラアナ河にのぞんでいるロサーリオの都の前にきました。
 マルコは船をすててふくろを手にもってポカの紳士が書いてくれた手紙をもってアルゼンチンの紳士をたずねに町の方をゆきました。
 町にはたくさんな人や、馬や、車がたくさん通っていました。
 マルコは一時間あまりもたずね歩くと、やっとその家を見
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