した譯であります。でなければ、廢刊も實は非常な難事であつたのです。
獄内での修業
「不意につかまつて、拘引されるならとに角、自分で進んで獄中へ行くなんて、隨分いやな氣持でせうね」
マダムはわたしの話をさへぎつて、かう聞くのであつた。二十年前に、自分の夫、即ち現在のルクリュ翁が、懲役二十年の缺席判決を受けて、英國に脱走した時のことを思ひ出したのであらう。マダムにとつては興味が深刻なのであつた。ルクリュ翁は深い沈默で依然として傍でこれを聞くのであつた。
いや、それほど、いやとも思ひませんでした。既に堺が行き、幸徳、西川が行つた後のことで、恐ろしくも思はず、むしろ好奇心にさそはれた方でした。それに先に私の文章で幸徳、西川の刑期を幾週間か長びかした責任も感じてゐた私は、晴ればれしい氣持で入獄しました。
最初は十一ヶ月の豫定でありましたが、幾つもの事件が重なつてゐましたし、赤衣を着けて幾度か法廷に立ち、幸徳の直接行動論に就いての辯論も自分で思ふ存分やつたので、刑期はまた延長して十三ヶ月になりました。入獄した最初は市ヶ谷の東京監獄に一ヶ月ゐましたが、それから巣鴨監獄に移されま
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