した結果、わたしの精神生活に非常に深い影響を與へました。それにこの運動中は特に親しく田中正造翁の驥尾に付して奔走することになつたので、わたしは人生といふものに、驚異の眼を見開くに至りました。田中翁の偉大な人格に觸れて、わたしは人間といふものが、どんなに輝いた魂を宿してゐるものか、どんなに高大な姿に成長し得るものか、といふことを眼前に示されて、感激せしめられました。それと同時に、今まで種々な説教や、傳記やらで學んだ教養や人物といふものが、現實に翁において生かされ、輝かされてゐることを見て、心強く感じました。わたしは、自身が如何にも弱小な人間であることを見出しながらも、常に發奮し自重自省するやうになりました。
 田中翁は決して自ら宗教や道徳を説きませんでした。しかし、翁の生活そのものが、その巨大な人格の中に温かい光明と熾烈な情熱とをたたへて、わたしを包んでくれるのでした。木下尚江はその著『田中正造翁』の中に『旭山は、翁に對しては殆ど駄々ッ児のやうに親しんでゐた』と書いてゐますが、わたしは翁に尾して活動することを眞に幸福に感じました。谷中村の農家に翁と同じ蚊帳の中に寢せられ、ノミに喰はれて眠
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