第だらうと信じてゐました。ところが、何ぞ計らん、幾週間の後になつても何の通知も來ませんでした。それは何かの間違ひだらうと何時までも考へたのですが、遂にあきらめざるを得ませんでした。
次で司法官の試驗にも應ずる積りで願書を出したのですが、冷い牛乳にあてられて大腸カタルに罹り、幾日幾夜かを澄子さんの手厚い看護に浴した幸福には感謝したが、大切な試驗には行けませんでした。そして、かうして二つの試驗に失敗したことは、わたしにとつても、澄子さんにとつても、暗い不安の種になりました。澄子さんはやがて學校に歸り、わたしは獨立生活の道を樹てなくてはなりません。それは漸く惱み悶えの戀に變つて行くのでした。
しかし私は試驗についてはまだ失望しなかつたのです。試驗官の方で私の答案に落第したのだ、とかう考へてゐました。時のたつのは早いもので、間もなく翌年の試驗期になり、今度は高文の試驗に應じました。提出論文は及第の通知に接しましたが、次の筆記試驗はまた落第でした。この時わたしは既に[#「既に」は底本では「既は」]澄子さんの家から他に引越してゐました。澄子さんの姉さんにお婿さんができたので、室を明ける必要がで
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