定的になつた。優越的権力は或る家族に世襲となつてくる。酋長は最初軍事的であるが後には政治的になつて来て、自分でその慾望に応じて獲得することを已《や》めて、他の人々から支給をうけるやうになる。」(沢田謙氏訳『第一原理』「世界大思想全集」四二八頁)これも分業が独占的階級的差別となつた原始的事例である。
○ 近代産業の分業
然るに近代に至り、交通機関や印刷器械の発達につれて知識の普及が急速に行はれ、次で諸種の新産業が勃興して来たので、旧来の特権制度や、家伝的分業法はこの新興勢力と新興技能とに対抗することが出来なくなつて崩潰した。鬱然として諸種の事業が興り、様々な改革や、発明や、発見や、絶えず生起する新現象は旧来の特権的事業を破壊して諸事業は自然に新興民衆の手に帰するのであつた。かくて宗教革命から政治革命となり、旧来の特権的分業は民衆間の分業となつた。そして産業革命までを経過して、現代の立憲政治と資本主義経済組織とを成就するに至つた。殊にかうした産業革命を齎らした主要原因たる機械産業の特徴は従来の事業の種目的分割ではなくて、技術実行上の分業であつた。近代の産業革命の警鐘を鳴らせ
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