合に於ても同様である。即ち解決すべき方程式の問題や製造すべき留針の仕事が常に存在すれば、世事一般の成行などに就ては悲しむべき無関心に陥らしめられるのである。」(拙訳『実証哲学』下巻一〇二頁)
然るにコントは他の所に於ては、寧ろ分業を以て社会の優越性の徴証としてゐる。「動物学の研究によれば、動物身体の優越性は各種機関が益々分化して而も連帯するに従て各種の機能が益々専門的になるといふ点にある。社会組織の特徴もまた同じで、それが全然個人組織に超駕する所以である。各人が特殊な生存をなして或る程度までは独立でその才能とその性質とが各々異なつてゐるに係はらず、また互に評議もせずに、たゞ自分達の個人的衝動に服従するのみと信じて、最も多くの場合、大多数の人が気の付かぬ間に、自ら全体の発展の為に協力すべく傾向してゐるといふ、かうした多数個人の協調よりも以上に驚くべき事態が他にあるであらうか? ……社会が複雑になるに従て益々顕著になる所の共働と分業との調和は、家庭的観点から社会的観点に向上した場合の人間の施設の特質をなすものである。」(前掲書九八頁)
○ 分業是否の諸問題
吾々はこの近代
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