代社会の病理的研究の必要がある。然るにオーギユスト・コントは病理学の原則に就て次の如く言つてゐる。「ブルツセエの天才によつて創始せられた実証的病理学の原則によれば、病理学的状態(病症)と生理学的状態(健康状態)との間には根本的の差異はない。病理学的状態とは常態にある生物の各現象に固有な、そして或は高等な或は下等な変化の限界の単なる延長であるに過ぎない。病理学的状態は或る程度に於ては純生理学的状態との類似を持つてゐないが、決して真の新らしい現象を生むものではない(註)。」この原則は今日の病理学の原則としても是認せられるやうであり、且つこれを社会の病理的現象を考察するの標準ともなし得るであらう。
註、拙訳『実証哲学』上巻三四八頁
○ 分業の病理的現象
分業が人類の社会生活を営むための必要条件として発達せることは前段に述べたところによつて略ぼ察せられるであらうが、尚ほ一段の深い意義を分業に見出すべき事実が別に存在する。それは吾々の社会生活が、器械的の結合から漸次に有機的結合へと発達して行く主要素としての分業の役目である。吾々の社会生活に器械的結合要素が多大な時期に於ては、そ
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