るく明灰色に波うっている。この胸の方の明るい大まかな凹凸と、鶯いろの背部の垂直に近い、削ったような潔い輪廓とがいい釣合を持っている。その背部の蓑毛《みのげ》を胸の方の房々の羽毛が逆に下から逆まきにかぶせているのは、ウソの身体の中で、一番|颯爽《さっそう》としているところだ。胸の羽毛は斂《おさ》めた翼の風切《かざき》りの上へまでぱらぱらとかぶさる。背中の蓑毛と胸の羽毛の下からこの風切りが、もう一度あざやかな黒色で、黒頭巾との呼応をしている。閉じた翼の風切りのさきは左右あまり強く交叉せず、直ぐ下に背の長さ位の尾羽根がやはり黒一色ですっとさがり、その親骨がはっきり見える。風切りの黒と、尾羽根の黒との間にちらちらと、下尾筒《したびとう》の雪白の毛が隠見する。これが中々シックだ。この白い毛は春先の頃になると幾分多くなるように観察された。琴ひくような、夢みるような、咽喉《のど》をふくらまして長く引っぱる唄を謡い出す頃である。彫刻にしても彩色したらこの一個所の白が恐らく甚《はなは》だ効果的であろうとその時考えた。片足をちぢめて腹の中へ入れ、その腹の羽毛が少し立っているのもおもしろい。
何にしろ黒じ
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