く、大いなる曲り角をしめしているのである。
一九三九年は、世界が個人文化より集団文化に移らんとする歴史の傾斜の中で、世界の人々が呻きのたうっていた年でもあった。
図書館の副館長マルチン・ロバーツ氏は、本の注文の書類の前に坐って、一日十二時間から十四時間働いていた。それにもかかわらず、法律図書館長のジョン・ヴァンス氏は、注文の書が後れることの原因を「自分が買いたいと思う本も、購入書類が副館長の事務室に積みあげられるが故に、いつも逃がしてしまう」とマックリーシュ氏に断乎として主張するのであった。
六百万冊のうち、百五十万冊(ほんとうは一、六七〇、一六一冊)は未整理として残っていた。一年間に三万冊の割合で、図書ならびにパンフレットが未整理として残りつつあった。一九三九年度には、十七万冊が行方不明になっていた。それは、各々の部門と部門の連絡の不充分な裂目の中にすべりこんでしまい、一つのカオスと成っていったからである。それは、後に五万冊にまで減じたが、何処かに、きわめるべき組織の誤謬が残っていた。製本すべき本も三十七万冊が、読むあたわざるかたちで待機していた。
かかる各部門の独立は、会
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