組織としての図書館へ
――マックリーシュの業績――
中井正一
一九三九年、アーチボルド・マックリーシュ氏がアメリカ国会図書館長に任命されたときは、全米図書館人は、彼がこの道のズブの素人であるという理由をもって反対したものであった。
彼は詩人であり、かの『化石の森』『リンカーン』の作者であるシャーッウドと親友でもあり、また、ルーズベルトの『炉辺閑話』等の文章のブラックチェンバーであったといわれている。
それが突如、国会図書館長となったのだから、一つのセンセーションを全米図書館界に起したことは容易に想像される。
彼はしかし、実に颯爽と、この図書館の改良に着手したのである。戦争という現実が、国会図書館をして、閑日月を楽しむ底の読書機構であることをゆるさなかったのではあろうが、この大任に敢然とついた素人としてのマックリーシュの心境は、察するに余りあるものがある。
後にユネスコの大憲章の筆を取ったヒューマニスト詩人としての彼が、敢えて事務官としての図書館長として、五年間を如何に過したか、恐らくそれにはおのずから、映画のシナリオにふさわしい心の中のさ迷いが、彼の眼の前に展けたに違いない
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