敢えてその中に彼が飛び込み、かつその中に溺れなかった所以は、集団的組織の中に適応することのできる近代精神の詩人であったからであろうか。かかる人の中に生まれる新しい美こそ、いま正に創られつつある美にほかならないものである。
 彼は、彼のこの興味ある五年間の任期の記録を、The Reorganization of the Library of Congress, 1939−1944[#「The Reorganization of the Library of Congress, 1939−1944」は斜体] の中で報告している。
 その中には、まことに世界の図書館が、自らを転換すべき大いなる曲り角を示すところのもの、生々しい断層の痕を示している。
 彼は就任すると共に、実に多くの有能な委員会を組織して、その凡ての委員会の構造の中核に、自分の身を没してしまった。決して彼は英雄とはならなかった。凡ての図書館職員が英雄となることによって、更に彼を拒否した図書館界の人々を英雄とすることによって、彼の全委員会は立派に任務を果たし、彼はその全運営の聴き役となることによって、大改革を遂行したのであ
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