った。そして、彼がこの国会図書館を去ってみると、そこには全く新しい型の、未来の意味における英雄のおもかげが、ホーフツとそこにフェードアウトしながら、映画における最も印象的な推移で、姿をあらわしている。
彼はその報告で次のようにのべている。「国会図書館の改組は、多くの男女のお互いの事務の中から行なわれたのであって、この報告もまた、この人達の事務にほかならない」と考えて、決して自分の事業とはしないのである。
この最初に出た報告そのものの主題は、やがて、この五年間の改組の基本的主題へと展開してゆくのである。彼の五年間の仕事は、集団をテーマとした一つの作曲であり、一つの作詩でもあった。
「私の在職五カ年の間になし遂げたいろいろな改変のうち、私が最も誇りに思うのは、職員をして益々積極的に、運営の流れの中に引きずり込むように変え得たことである」といっている。すなわち、自分の命令に従えたことにあるのではなくして、大きな組織が構成され、その組織体が、一つ一つ積極的な意欲のもとに、大きな流れの中に流れ込んで行ったことを、彼は誇りとしたのである。
一九三九年における国会図書館は、真の意味での組織
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