文化法案が、この日本でもつ運命が、こんな苦労をしたことを、私は石に刻んで置きたいのである。数十年後の人々が、それを笑をふくんで読みかえす日のためにである。しかし私は、これが決して単なる屑法案であるとは思っていないのである。文化法案はそれがいかにささやかでも、生きた芽のようなエネルギーをもっているというのである。
 零戦闘機のような技術的製作でも、四十年以上義務教育のある国家の文化雰囲気でないと製作できなかったそうである。突然満洲国へ工場をもっていってもやりにくいそうである。文化というものはそんなものである。数十年の空気が醸し出すものである。ソヴィエートに二十八万あるのに日本に三百しかない図書館を、一万七百に増すことを目標とするこの法案は、決して屁のような法案ではない。
 村々に図書館が出来、円らな瞳をした少年達が、本を読む喜びを知ることは美しいことではないか。大塚金之助氏に或る雑誌記者が、「貴方がこれまで一番感動されたことは何ですか」とたずねたら、「小さい時、図書館へいって、分厚い本を館員から渡されたときの、深い感動ほど、私をゆすったものはこれまでない」といわれたそうである。私はこ
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