図書館法楽屋話
中井正一

 この議会で図書館法が通過したことは、全図書館人にとって、まことに感慨深いものがあるのである。
 人々にとって、予算の背景のないあんな法案が何になるかという感じもあるであろうが、あの法案があの形になるまでには、いろいろの山もあれば河もあったのである。戦い敗れた国の文化法案の一つの類型的な運命を担っていたとも思えるのである。ここに少しふりかえってみたい。
 ソヴィエートで図書館の数が不明確ではあるが二十八万五千といわれ、アメリカで一万一千三百(一九四五年)といわれているとき、日本ではそれに相当する規格の図書館は僅かに三百にすぎないのである。届出の千三百の日本の図書館は、それはほんの図書室といえるものまで数えてである。
 この世界における驚くべき日本の現在の貧しさを平均化すべく、C・I・Eは昭和二十一年の三月にまず最初の行動に移ったのであった。キニー氏のつくった文部省ならびに図書館界の準備的会合である。まず在京及び近県有志と文部省より出発して、全国中央図書館会議にまでそれは発展したのであった。
 いろいろの要綱案が、二十二年度において練られ、ネルソン氏もこれに援
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