て一人ぼっちになっていた時で、二時間ばかりしみじみと身の上ばなしを語り合った。
駅に着くと、もう選挙本部からの連絡は何かの妨害で断ち切られて、ビラは駅の机の上にまるめられてころがっていた。宿をとって、小筆を三本買って来て、それをくくってビラを書いた。演説届もそれからしなければならない始末であった。折から春の山の雪が濃く降って来た。二人の青年の叫びつづけるメガフォンの声はすぐにかき消されて行った。女学校のガランとした十三、四人しかいない空虚な電燈の光、寂として雪を聴くかのような重い外の空気、青年と共に在ったあの広島県の山の夜を、私はいいようもないノスタルジアをもって、今まさに東京の塵炎の中から恋いしく思わずにいられない。
翌る日は吉舎町、現知事一行は五台の自動車で乗込んでいたのに遭遇した。青年達は凄愴に緊まりはじめた。この山中に入っている日、突然電報が入った。
「タチアイエンゼツアルヒロシマニスグカヘレ」
今広島に出ては、三郡ばかりを犠牲にしなければならない。しかし本部の予定は絶対である。帰って演説会場に走せつけた。しかしそれは何かの策謀であったのか、相手もいなければ、広告を出して
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