恐る、その冒険に出かけて見たくなるのである。以下富士の人穴探険の秋の読物めいて二、三記して見よう。
実は漢字渡来前の語彙の表をつくって、その組合せを五十音図表につくって、暇を見ては、パズルを解くように改めてゆくのである。
五十音の中から三つばかりここに例を挙げて見よう。
「た[#「た」は太字]」「一つの方向に直線に走っている力感」としての語感をもつものとして考えて見る。
「方」「手」(方向を指ししめす)「違」(方交う)「副」(手交う)「滝、激」(タギチ)「猛、高、焼〔驍?〕、嶽、丈、竹、感〔威?〕(タケル)」これらのものをじっと見ていると、同じ本質をいろいろの意味に展開しているかのようである。更に「たた」と重なった場合、「正、直、但、唯、徒」となるが、直線感が直線感に重なると、単調の意味を表わすものとなって来るのは、実に病をして篤からしむる所以である。「立、館、縦、楯」「起、発」は又、「裁、絶、断、太刀」と無関係ではなく、皆直線に走る力感に関係が深い。ドイツ語 durch の意味と語感を同じくする。この直線が振れると、「狂言(タフル)、戯、狂、倒」となるのである。こんなに辿ってゆけ
前へ
次へ
全13ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中井 正一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング