ば、きりもなくそう信ぜられて来るのである。秋夜の独りを淋しくさせないものを用意している。更に方面をかえて、
「は[#「は」は太字]」これを、「限界にまで外に向う拡汎感」をもつ語感の言葉と考えて見るとどうだろう。「羽、葉、匁、端」「放」「散(ハフル)」「元、初、始」「走」「延(ハフリ)」「這」「浜」等に、更に面白いのは、「ハル」の語群である。拡汎して表面が張力をもって漲っている場合、「張、腫、張流(水をはる)、晴、萌(芽出)、春、原、墾、腹、散之(ハラシ)」は、一つのハルの本質に種々の意味群がまつわっているかのようである。この「は」に「た」(直線に走る力感)が加わると、「涯」(ハタテ)、それから「徴」(ハタラ)、「さと長ら我課役(エズキ)徴ばいましもなかむ」と云ったように、「遠くにポーンと徴発されて行ってしまったら悲しいことだ」と慨く、このハタラから、働くは出たんだろうが。「果つ、泊つ、竟、極、尽(ハテ)」等にも又無関係ではあるまい。
 もう一つおまけに、「よ[#「よ」は太字]」という言葉を考えて見たい。これを「進行過程に於けるその切断的節標」の語感の語と見るとどうだろう。伸びゆく竹の節
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