中に漾游していた。しかし今やそうではない。社会的関連の行為、生産への関連体のまま、その射影体を物理的集団の性格の中に見いだして、その関連《ツーザンメンハング》の情趣を味わうのである。

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 かかる関連の情趣を喚起する物理的集団的性格の構成体は、一般的に社会的集団的性格の中より生産される。機械的構造はすなわちそれである。映画の構成がまたそうである。
 その中でもレンズとそれに伴うフィルム、また真空管のもつ性格は、特殊な集団的性格をもっている。それは単なる観照的対象として関連的情趣をもっているのみではない。それは、注意すべきことは、それが感覚それ自身の中に侵入してくることである。いわばそれは社会的集団的性格の神経組織自体であることである。
 眼であり、耳であり、喉であることである。フィルムはその記憶者であり、また再現者でもある。社会的集団的性格は、いわばかかる機能の出現によってその形成をうながされ、固まり、成長してきたと考えられよう。いわば交渉単位としての個人より、集団としての交渉単位にまでの発展には、それの組織をして組織たらしむる機能性を要する。しかもそれが漸次なしとげられつつある
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