白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]其一たび口を開くや、議論堂々として常に高處を占め、大局に居り、其眼中復た區々の小是非小問題なきものゝ如し※[#白ゴマ、1−3−29]然り唯だ百姓議論[#「唯だ百姓議論」に白丸傍点]、地方問題を以て終始囂然たる現時の衆議院に在ては[#「地方問題を以て終始囂然たる現時の衆議院に在ては」に白丸傍点]、學堂の演説の如きは[#「學堂の演説の如きは」に白丸傍点]、實に未來大臣の準備演説ともいふ可き名譽を要求し得るものなり[#「實に未來大臣の準備演説ともいふ可き名譽を要求し得るものなり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]試に見よ、三百の頭顱中、其伎倆彼れに優るもの必ずしも之れなきに非らじ※[#白ゴマ、1−3−29]而も學堂の如く功名心に富み[#「而も學堂の如く功名心に富み」に二重丸傍点]、學堂の如く大臣學を專攻するものありや否や[#「學堂の如く大臣學を專攻するものありや否や」に二重丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]ありと雖も恐らくは極めて少し※[#白ゴマ、1−3−29]是れ學堂の漸く頭角を現はすに至れる所以なり。
 且つ彼れは衆議院に於て、討論家として卓越なる能力を顯はしたり※[#白ゴマ、1−3−29]是れ實に彼れが成功の第二原因なり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れの討論は[#「彼れの討論は」に白丸傍点]、深遠博大なる思想を表現せず[#「深遠博大なる思想を表現せず」に白丸傍点]、光怪陸離たる情火を發起せず[#「光怪陸離たる情火を發起せず」に白丸傍点]、又長江大河一瀉千里の雄辯を認識せしめず[#「又長江大河一瀉千里の雄辯を認識せしめず」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]然れども論理痛快[#「然れども論理痛快」に白丸傍点]、法度森嚴にして[#「法度森嚴にして」に白丸傍点]、往々大膽不敵の硬語あり[#「往々大膽不敵の硬語あり」に白丸傍点]、以て能く議場の群囂を制するに足るの力なきに非ず[#「以て能く議場の群囂を制するに足るの力なきに非ず」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]特に其論敵に對するや[#「特に其論敵に對するや」に白丸傍点]、逼らず[#「逼らず」に白丸傍点]、激せず[#「激せず」に白丸傍点]、熱殺の奇なきも[#「熱殺の奇なきも」に白丸傍点]、冷殺の妙あり[#「冷殺の妙あり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]婉約の巧なきも[#「婉約の巧なきも」に白丸傍点]、辛辣の趣味あり[#「辛辣の趣味あり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]如何なる大嘲罵の言も[#「如何なる大嘲罵の言も」に白丸傍点]、彼れは之れを出だすに極めて沈着の辭氣を以てし[#「彼れは之れを出だすに極めて沈着の辭氣を以てし」に白丸傍点]、如何なる滑稽笑※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]の意義も[#「如何なる滑稽笑※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]の意義も」に白丸傍点]、彼れは説教師の如く[#「彼れは説教師の如く」に白丸傍点]、襟を正だし[#「襟を正だし」に白丸傍点]、眉を昂げて表白する如きは[#「眉を昂げて表白する如きは」に白丸傍点]、實に一種の討論術を得たりと謂ふ可し[#「實に一種の討論術を得たりと謂ふ可し」に白丸傍点]。
 伊藤内閣の時なりき、彼れは渡邊侠禪と、一錢一厘の問答を試みて侠禪を飜弄せり※[#白ゴマ、1−3−29]一錢一厘の問答、何ぞ其れ滑稽なる※[#白ゴマ、1−3−29]而も學堂は極めて嚴格なる聲色を以て、此奇劇を演じたりき※[#白ゴマ、1−3−29]大抵學堂の討論は、詈罵笑※[#「言+墟のつくり」、第4水準2−88−74]を交へざるものなしと雖も、彼れは曾て笑ひたることなく、又怒りたることなく※[#白ゴマ、1−3−29]飽くまで冷々然たり、飽くまで從容自若たり※[#白ゴマ、1−3−29]斯くの如き討論家は[#「斯くの如き討論家は」に二重丸傍点]、往々大激論大爭議の壇上に於て顯著なる成功を博し得ること多し[#「往々大激論大爭議の壇上に於て顯著なる成功を博し得ること多し」に二重丸傍点]。
 彼れが成功の原因は、更に焉れより大なるものあり※[#白ゴマ、1−3−29]何ぞや、彼れが黨人として極めて忠實なる黨人たるに在り※[#白ゴマ、1−3−29]彼れ曾て大隈伯を論じて曰く、人或は進歩黨の一擧一動を以て悉く大隈伯の指揮に出づるが如くに想像するものあり※[#白ゴマ、1−3−29]是れ何の謬見ぞや※[#白ゴマ、1−3−29]凡そ一政黨の進退を指揮するの首領は、常に黨員と實際の運動を倶にするものならざる可らず※[#白ゴマ、1−3−29]然るに伯は早稻田に閑居して、唯だ客と政談を試むるを樂みとし、復た自ら出でて事を政界に見ることなし、夫れ戰場の外に居て大將軍の事を行はむとす、是れ世間決して有る可からざる道理なり※[#白ゴマ、1−3−29]進歩黨の實力首領は[#「進歩黨の實力首領は」に白丸傍点]、他日必らず議院より出現せむ[#「他日必らず議院より出現せむ」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]復た何んぞ大隈伯の力を借るを要せむや[#「復た何んぞ大隈伯の力を借るを要せむや」に白丸傍点]と※[#白ゴマ、1−3−29]彼れの自ら任ずるもの洵に斯くの如し、是を以て議院の内外に於ける彼れの言動は、一に進歩黨の利害得失より打算したるものを準と爲し、則ち進歩黨の爲めに盡す所以のもの、亦隨つて熱心到らざるなきを見る※[#白ゴマ、1−3−29]其今日あるを致すは豈夫れ偶然ならむや※[#白ゴマ、1−3−29]是れ彼れが成功の第三原因とす。
 然りと雖も、彼れが進歩黨中最も有力の位地を得たる所以のものは、唯だ伎倆と勉強との力に是れ由るに非ずして別に之れが原因たるものあり、品性高潔にして體面を重んじ[#「品性高潔にして體面を重んじ」に二重丸傍点]、清澹の生活を樂みて鄙劣の念なき即ち是れなり[#「清澹の生活を樂みて鄙劣の念なき即ち是れなり」に二重丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れ常に武士道を説く、何となれば武士は最も體面を重むずればなり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れ又金錢を輕んじて生産を治めず、鄙吝の念或は之れと共に生ずるを恐るればなり※[#白ゴマ、1−3−29]是れ實に當世罕に見る所にして、彼れが内、政友に信任せられ外、敵黨の敬憚を受くる所以のものは此れが爲めなり※[#白ゴマ、1−3−29]夫れ才は得易らず、徳も亦豈得易からむや※[#白ゴマ、1−3−29]况むや黄金の魔力横行して、敗徳の政治家頻りに輩出するの今日に於てをや※[#白ゴマ、1−3−29]今日の所謂政治家は、ワルポールの所謂市價を有する動物に近し※[#白ゴマ、1−3−29]故に其爲す所人身賣買に異らざるものあるも、曾て自ら之れを耻とせざるのみならず※[#白ゴマ、1−3−29]又人に向ひて之を説くを意とせざるに至る※[#白ゴマ、1−3−29]此時に當り、金錢を輕んずること彼れが如く[#「金錢を輕んずること彼れが如く」に白丸傍点]、體面を重んずること彼れが如き人物は[#「體面を重んずること彼れが如き人物は」に白丸傍点]、一黨の領袖として人意を強うし[#「一黨の領袖として人意を強うし」に白丸傍点]、國民の代表者としては正義を擔保するに足る[#「國民の代表者としては正義を擔保するに足る」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]是れ余が深く彼れを多とする所以なり※[#白ゴマ、1−3−29]余之れを聞く、西郷南洲翁の信望一代を蓋ひたるは、必ずしも翁が伎倆の大なるが爲に非ずして、唯だ金錢を輕むずるの一美徳あるに由れり[#「唯だ金錢を輕むずるの一美徳あるに由れり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]蓋し薩人は概して鄙吝の質あり、翁獨り高擧超脱夐然として俗流に出づ※[#白ゴマ、1−3−29]是れ其能く信望を天下に博せし所以なりと。古への大政治家は[#「古への大政治家は」に白丸傍点]、多く文臣錢を惜まざるの士なり[#「多く文臣錢を惜まざるの士なり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]ピツトの如き、ジスレリーの如き皆然らざる莫し※[#白ゴマ、1−3−29]學堂が身を濁世に處して[#「學堂が身を濁世に處して」に白丸傍点]、曾て公徳を破るの行爲なきは[#「曾て公徳を破るの行爲なきは」に白丸傍点]、職として文臣錢を惜まざるの氣象に由るのみ[#「職として文臣錢を惜まざるの氣象に由るのみ」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]是れ彼れが信望の日に高きを致せる第四の原因なり。

      學堂の人物
 政治家としての學堂は、策略縱横、權變百出、能く一時の利害を制するに於て木堂に及ばず※[#白ゴマ、1−3−29]博辯宏辭、議論滔々として竭きざるは沼南に及ばず※[#白ゴマ、1−3−29]然れども志氣雄邁[#「志氣雄邁」に白丸傍点]、器識超卓[#「器識超卓」に白丸傍点]、常に眼を大局に注ぎ[#「常に眼を大局に注ぎ」に白丸傍点]、區々の小是非を爭はずして[#「區々の小是非を爭はずして」に白丸傍点]、天下の事を以て自ら任ずるの大略あるに至ては[#「天下の事を以て自ら任ずるの大略あるに至ては」に白丸傍点]、學堂實に一日の長ある如し[#「學堂實に一日の長ある如し」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]余は彼れを以て未だ經國の大才なりと認むる能はず、然れども其抱負の偉大にして自信の深きは[#「其抱負の偉大にして自信の深きは」に白丸傍点]、薄志弱行の徒累々相依るの今日に於て[#「薄志弱行の徒累々相依るの今日に於て」に白丸傍点]、亦容易に得易からざるの士なり[#「亦容易に得易からざるの士なり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]若し夫れ彼れを粗放の虚才と爲すは、聊か深刻の評たるを免かれず※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば彼れは平生大言壯語の癖ありと雖も、彼れは其實一個謹愼の天分あり、責任を重んずるの操守あり、事を苟もせざるの眞面目あり、彼れの大言壯語は、、彼れが大舞臺に立て大作爲を試みんとするの英雄的思想より來る※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは草※[#「くさかんむり/奔」、80−上−20]に在りと雖も、其志既に臺閣に存すればなり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れが一たび外務參事官の位置を甘むじたるは、是れ豈彼れの本心ならむや、故に彼は之を棄つること弊履の如く夫れ輕かりき。要するに彼の未來は最も多望なるものゝ一なりと謂可し。(三十年十一月)

     尾崎東京新市長

 ▲政友會を脱して、遽かに政治的孤兒となつた尾崎行雄君は、棄てる神あれば助くる神ありで、同情ある東京市民に拾ひ上げられて市長の地位に安置せられた。君は曾て言つたことがある。我輩の生涯は恰も隧道の多い鐵道旅行をするやうなもので[#「恰も隧道の多い鐵道旅行をするやうなもので」に白三角傍点]、時々暗黒の處に差し掛つては[#「時々暗黒の處に差し掛つては」に白三角傍点]、再び前途の光明を認めてヤツト安心することがあると[#「再び前途の光明を認めてヤツト安心することがあると」に白三角傍点]。なるほど考へて見ればさうかも知れない。
 ▲君がジスレリーを氣取て居るといふのは有名な話であるが、近頃は君をチヤムバーレーンに較べるものがあるやうだ。チヤムバーレーンはバーミンガムの市長と爲つたこともあるから、此の點だけが似て居るやうだが、人格は全く反對で[#「人格は全く反對で」に白丸傍点]、少しも似て居る處がない[#「少しも似て居る處がない」に白丸傍点]。
 ▲チヤムバーレーンは理想家[#「理想家」に丸傍点]でなくて、實行家[#「實行家」に丸傍点]である。但し何んな政治家でも、苟も政治家であつてみれば、何かの理想を持つて居らぬものはないのである。チヤムバーレーンにも、赤いとか白いとかいふ理想あるに違ひない。しかし彼れは自己の理想よりも更に政治家に大切なものがあるといふことを心得て居る[#「しかし彼れは自己の理想よりも更に政治家に大切なものがあるといふことを心得て居る」に白丸傍点]。即ち時代の精神である[#「即ち時
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