黒の中に模索し[#「共に彼れを暗黒の中に模索し」に白丸傍点]、彼は終に政界の一未知數と爲れり[#「彼は終に政界の一未知數と爲れり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]請ふ吾人をして先づ彼れの個人的資質を觀察せしめよ。然らば彼れに對する設題は自ら解答せらるゝを得む。
彼は天性の黨人なり
彼れは天性の黨人なり[#「彼れは天性の黨人なり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば彼れは黨人に必要なる二個の特質を有すればなり[#「何となれば彼れは黨人に必要なる二個の特質を有すればなり」に白丸傍点]、其放膽不諱にして人を人とも思はず[#「其放膽不諱にして人を人とも思はず」に白丸傍点]、爭氣猛烈にして常に戰を挑むの風ある如き[#「爭氣猛烈にして常に戰を挑むの風ある如き」に白丸傍点]、即ち其一なり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは此特質あるが爲めに、或は平地に風波を起し、或は故らに敵を作るの弊なきに非ずと雖も、其黨人として顯著の位地を占るに至りたるもの、亦此特質あるに由らずむばあらじ。
彼れの政治的閲歴は[#「彼れの政治的閲歴は」に二重丸傍点]、半ば爭鬪の事實を以て作れり[#「半ば爭鬪の事實を以て作れり」に二重丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れの爭鬪を開始するや[#「彼れの爭鬪を開始するや」に傍点]、其名義の撰擇に注意せずして[#「其名義の撰擇に注意せずして」に傍点]、唯だ利害若くは感情の衝突に出づるもの多く[#「唯だ利害若くは感情の衝突に出づるもの多く」に傍点]、而も其作戰計畫の單純にして露骨なる[#「而も其作戰計畫の單純にして露骨なる」に傍点]、動もすれば壯士の私鬪に類するの嫌なきに非ず[#「動もすれば壯士の私鬪に類するの嫌なきに非ず」に傍点]、是れ彼れの爲に甚だ惜む可しと爲す、試に其一二を言はむか。
曾て大隈伯等の始めて改進黨を組織するや、其主義政綱は大體に於て自由黨と其歸着を同うせり※[#白ゴマ、1−3−29]故に自由黨よりいへば、たとひ改進黨を政友と認めざるまでも、必らずしも之れを正面の政敵とするの必要なかりしに似たり※[#白ゴマ、1−3−29]然るに三菱問題起るに當て、改進黨が冷然之れを傍觀したるの故を以て、直に僞黨撲滅の題目の下に改進黨を攻撃したるは[#「直に僞黨撲滅の題目の下に改進黨を攻撃したるは」に白丸傍点]、彼れ及び古澤滋の二人實に其張本人たりき[#「彼れ及び古澤滋の二人實に其張本人たりき」に白丸傍点]、顧ふに是れ自由黨の黨勢を擴張するに於て多少の成功を博するに足るの一手段たりしは疑ふ可からずと雖も、自由、改進兩黨をして呉越相容れざるの關係と爲らしめたるは、蓋し亦茲に淵源する所ありき。
既にして井上條約案出づるや、兩黨偶然其歩武を同うして之に反對し、一日兩黨の聯合懇親會あり※[#白ゴマ、1−3−29]其交情大に融和せむとするに際し、何等の不作法ぞ[#「何等の不作法ぞ」に白丸傍点]、彼れは卒然沼間守一を打撲して[#「彼れは卒然沼間守一を打撲して」に白丸傍点]、大に改進黨を激昂せしむるものあらむとは[#「大に改進黨を激昂せしむるものあらむとは」に白丸傍点]。
國會既に開くるに及で、自由、改進の兩黨相聯合して藩閥政府と戰ひ、稱して民黨と謂ふ※[#白ゴマ、1−3−29]彼れの代議士と爲るや、亦民黨と其向背を同うし、民黨の推挽に依て衆議院議長の椅子を得たりき※[#白ゴマ、1−3−29]然るに彼れは倏忽手を飜へして復た改進黨を攻撃し[#「然るに彼れは倏忽手を飜へして復た改進黨を攻撃し」に白丸傍点]、以て民黨を破壞するの擧を行ひたりしは何ぞや[#「以て民黨を破壞するの擧を行ひたりしは何ぞや」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]當時世間傳へて曰く、星亨の民黨破壞演説は、彼れが竊に陸奧宗光と約して、自由黨を政府黨たらしめむとするの隱謀より出でたりと※[#白ゴマ、1−3−29]されど自由黨は彼れの專有物に非ざりしを以て、彼れが言動に慊焉たるものは、皆相率ゐて自由黨と分離し、自由黨は此れが爲めに一大傷痍を受けたると共に、彼れも亦一時自由黨を去るの已むを得ざるに至りたりき。
此に於て乎彼は啻に一般政界の信用を失ひたるのみならず、自由黨も亦漸く彼れを敬して遠け、其全權公使に任ぜられて米國に派遣せらるゝや[#「其全權公使に任ぜられて米國に派遣せらるゝや」に白丸傍点]、識者之れを評して自由黨の内亂豫防策なりといへり[#「識者之れを評して自由黨の内亂豫防策なりといへり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば自由黨の内亂は、實に彼れが放膽不諱なる擧動に激成せらるる虞ありたればなり。
彼れが爭鬪の力に富めるは恰も英國のオーコンネルに似たり※[#白ゴマ、1−3−29]其口を開けば輙ち罵る所[#「其
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