て伊藤博文伯に繋けたる所の希望は」に傍点]、全く水泡に屬したり[#「全く水泡に屬したり」に傍点]。今や篤麿は私情を去て公義に依り[#「今や篤麿は私情を去て公義に依り」に傍点]、舊來の情誼を棄てゝ[#「舊來の情誼を棄てゝ」に傍点]、斷然伊藤内閣反對の側に立ち[#「斷然伊藤内閣反對の側に立ち」に傍点]、公然其の非を鳴らさゞるを得ざるの場合に至れり[#「公然其の非を鳴らさゞるを得ざるの場合に至れり」に傍点]。國家の爲に私情を割く[#「國家の爲に私情を割く」に傍点]、篤麿不敏と雖も已むべきに非るを知ればなり[#「篤麿不敏と雖も已むべきに非るを知ればなり」に傍点]と。情理并び到れるの辭なりと謂ふべし。
近衞公は私情を忍ぶに於て實に強固なる意思を有したる人なりき[#「近衞公は私情を忍ぶに於て實に強固なる意思を有したる人なりき」に白丸傍点]。而も其の意思や[#「而も其の意思や」に白丸傍点]、公義の發動より出でて[#「公義の發動より出でて」に白丸傍点]、一點の野心を雜へず[#「一點の野心を雜へず」に白丸傍点]、所謂る公鬪に強くして私鬪に弱きの類乎[#「所謂る公鬪に強くして私鬪に弱きの類乎」に白丸傍点]。嗟乎公や逝く、公の後繼者たるべき人物は果して有りや無しや。(三十七年二月)
星亨
星亨
彼は政界の未知數なり
星亨氏は曾て不人望を以て高名なりき※[#白ゴマ、1−3−29]個人としては彼れを味方とするものも[#「個人としては彼れを味方とするものも」に傍点]、公人としては反つて彼れを敵視するもの多し[#「公人としては反つて彼れを敵視するもの多し」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]或は彼れの擧動を咎めて[#「或は彼れの擧動を咎めて」に傍点]、車夫馬丁に類する賤人なりといひ[#「車夫馬丁に類する賤人なりといひ」に傍点]、或は彼れの演説を評して[#「或は彼れの演説を評して」に傍点]、恰も欹形の嘴を有せる怪鳥が常に惡聲を放つが如しといひ[#「恰も欹形の嘴を有せる怪鳥が常に惡聲を放つが如しといひ」に傍点]、或は彼れの性格を稱して[#「或は彼れの性格を稱して」に傍点]、猛獸の血液を混じたる人中の惡魔なりといひ[#「猛獸の血液を混じたる人中の惡魔なりといひ」に傍点]、以て彼れを卑むに非ずむば彼れを畏れ[#「以て彼れを卑むに非ずむば彼れを畏れ」に傍点]、以て彼れを畏るゝに非ずむば彼れを憎むもの[#「以て彼れを畏るゝに非ずむば彼れを憎むもの」に傍点]、滔々大率是れなり[#「滔々大率是れなり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]現に彼れが外務大臣候補者として内閣の問題となりし時の如き、閣員の多數も、亦彼れの不人望を畏れて之を排斥したりといふに非ずや、余は固より傳ふる如きの事實ありや否やを證言する能はずと雖も、單に之れを一時の風説とするも、斯る風説の多少世間に信ぜらるゝを見れば、亦以て彼れが如何に政界に不人望なるかを認識するに足る。
されど彼れを讚美する一部の聲は亦甚だ高大なり※[#白ゴマ、1−3−29]一田舍新聞は、彼れを以て東洋の大豪傑と爲し[#「彼れを以て東洋の大豪傑と爲し」に傍点]、未來の總理大臣と爲し[#「未來の總理大臣と爲し」に傍点]、我選擧區民は此の人物を代議士とするの榮譽を失ふ可からずと絶叫して[#「我選擧區民は此の人物を代議士とするの榮譽を失ふ可からずと絶叫して」に傍点]、彼れを[#「彼れを」に傍点]ビスマーク、グラツドストンにも匹敵す可き大政治家の如くに誇張したりき[#「にも匹敵す可き大政治家の如くに誇張したりき」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]其想像の過度なる、殆ど滑稽突梯に陷ると雖も、彼に對する想像の奇なるは其不人望の方面に於ても亦同一なり。見よ彼れが將に歸朝せむとするや、或は曰く彼れの歸朝は政界の一大恐慌なり[#「彼れの歸朝は政界の一大恐慌なり」に傍点]、其進退は天下の大問題なりと[#「其進退は天下の大問題なりと」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]或は曰く、彼れは内閣を強迫して歸朝せり[#「彼れは内閣を強迫して歸朝せり」に傍点]、内閣は彼れを覊束するの威力なきなりと[#「内閣は彼れを覊束するの威力なきなりと」に傍点]、其状恰も敵國來襲を報ずる警戒の如し。既にして彼れの歸朝するや、彼れの言動は極めて沈靜なり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れ曰く余にして若し求むる所あれば、何時にても入閣するを得可し※[#白ゴマ、1−3−29]余は唯だ求むる所なきのみ※[#白ゴマ、1−3−29]余は一憲政黨員として此際に努力せむと欲するのみと※[#白ゴマ、1−3−29]此に於て乎彼れを崇拜するもの[#「此に於て乎彼れを崇拜するもの」に白丸傍点]、彼れを信用せざるもの[#「彼れを信用せざるもの」に白丸傍点]、共に彼れを暗
前へ
次へ
全125ページ中113ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング