マ、1−3−29]唯だ時の内閣に忠勤を勵むを以て華族の本分なりと誤想し、俗吏の頤使を受けて、犬馬の勞を執るものあるに至て、華族の體面幾ど地に墜ちたりと謂ふ可し※[#白ゴマ、1−3−29]此くの如き華族にして安ぞ能く皇室の藩屏たるを得むや※[#白ゴマ、1−3−29]是れ彼れが熱心なる華族改革論者たる所以なり※[#白ゴマ、1−3−29]然れども彼れは現代華族の終に濟ふ可からざるを知る※[#白ゴマ、1−3−29]故に自ら進で學習院に長と爲り、以て華族の子弟を教育し、以て第二代の華族を作らむと欲するのみ※[#白ゴマ、1−3−29]自任の高きものに非ずして何ぞや。
謹愼の人
昔者孔明、漢後主に上表して曰く、先帝臣が謹愼なるを知る、故に臣に託するに大事を以てせりと※[#白ゴマ、1−3−29]藤田東湖評して曰く、謹愼の二字實に孔明の人物を悉くせりと※[#白ゴマ、1−3−29]夫れ社稷の名臣は多く謹愼の人なり※[#白ゴマ、1−3−29]謹愼の人に非ずむば決して天下の大事を託す可からず※[#白ゴマ、1−3−29]顧ふに近衞公を知らざるものは其言動の往々矯激に失するあるを以て、或は誤りて不覊粗放の人物と認むるものなきに非ず、然れども彼れは本來謹愼にして責任を重むずること人に過ぐ[#「然れども彼れは本來謹愼にして責任を重むずること人に過ぐ」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]其謹愼なる點に於て[#「其謹愼なる點に於て」に白丸傍点]、彼は酷だ故三條公に類するものあり[#「彼は酷だ故三條公に類するものあり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]唯だ三條公の女性的氣象なるに反して[#「唯だ三條公の女性的氣象なるに反して」に白丸傍点]、彼は男性的氣象を以て其謹愼の天分を包めるを異りとするのみ[#「彼は男性的氣象を以て其謹愼の天分を包めるを異りとするのみ」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]則ち彼は三條岩倉二公を調和したる資質を具へ[#「則ち彼は三條岩倉二公を調和したる資質を具へ」に二重丸傍点]、徳量は三條公の體を得て[#「徳量は三條公の體を得て」に二重丸傍点]、沈勇は岩倉公の血を受けたり[#「沈勇は岩倉公の血を受けたり」に二重丸傍点]。
主義の人
彼れ前年獨逸大學に在るや、其卒業論文として責任内閣論を草し、以て名譽ある學位を受けたり※[#白ゴマ、1−3−29]人は曰く、責任内閣は近衞公の初戀なり[#「責任内閣は近衞公の初戀なり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]故に終生志を渝へざる可しと[#「故に終生志を渝へざる可しと」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れが初期議會以來、常に責任内閣、藩閥打破を主張して、所謂る貴族院に於ける硬派の首領たるは、即ち其初志を貫徹せむとするが爲めのみ、彼れが其平生師父の禮を以て待てる伊藤侯と政敵たるを辭せざるも、亦此れが爲めのみ※[#白ゴマ、1−3−29]彼れが衆議院の非藩閥派と屡々提携して、其運動を倶にするの迹あるも、亦此れが爲めのみ※[#白ゴマ、1−3−29]故に彼れは伊藤侯の一派に敵視せられ、大隈伯の一派に多くの政友を有すと雖も、是れ唯だ政見の異同より來れる結果のみ※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは決して大隈派に非ざるのみならず[#「彼れは決して大隈派に非ざるのみならず」に傍点]、大隈派の盛んに伊藤攻撃を事としたるの時は[#「大隈派の盛んに伊藤攻撃を事としたるの時は」に傍点]、彼れは未だ大隈伯に一面識すらなきの日なりき[#「彼れは未だ大隈伯に一面識すらなきの日なりき」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは主義の爲めに伊藤侯と爭ひたるも[#「彼れは主義の爲めに伊藤侯と爭ひたるも」に傍点]、曾て黨派的感情の爲めに其去就を定めたることはあらじ[#「曾て黨派的感情の爲めに其去就を定めたることはあらじ」に傍点]。
華族社會の好一對
近衞公と西園寺侯とは華族社會の好一對なり、近衞公は現に貴族院議長たり[#「貴族院議長たり」に傍点]、西園寺侯も亦曾て貴族院に副議長[#「貴族院に副議長」に傍点]たりき※[#白ゴマ、1−3−29]西園寺侯は現に伊藤内閣の文部大臣たり[#「伊藤内閣の文部大臣たり」に傍点]、近衞公も亦曾て松方内閣より文部大臣を擬せられたりき[#「松方内閣より文部大臣を擬せられたりき」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]近衞公は久しき以前より機關雜誌を發行して[#「機關雜誌を發行して」に傍点]、今も尚ほ現に之れを所有せり[#「今も尚ほ現に之れを所有せり」に傍点]、西園寺侯も亦前年曾て一新聞を發行して自ら之れが記者たることありき[#「一新聞を發行して自ら之れが記者たることありき」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]其位地境遇何ぞ太だ相似たるや。
特に近衞
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