處置は[#「何となれば彼れの安詳沈着たる態度明敏果斷なる處置は」に傍点]、自然に議長たるの伎倆を示したればなり[#「自然に議長たるの伎倆を示したればなり」に傍点]。
松方内閣成るや、彼は遂に議長に勅選せられて第十議會に膺りたりき※[#白ゴマ、1−3−29]彼れが議長としての伎倆は益々世間に認識せられたりき※[#白ゴマ、1−3−29]彼れの政敵は彼れを呼で壓制議長といひ[#「彼れの政敵は彼れを呼で壓制議長といひ」に白丸傍点]、彼れの政友は亦彼れが餘りに公平なるを喜ばざりしと雖も[#「彼れの政友は亦彼れが餘りに公平なるを喜ばざりしと雖も」に白丸傍点]、其善く議場を整理し[#「其善く議場を整理し」に白丸傍点]、善く討論を指導したるに至ては[#「善く討論を指導したるに至ては」に白丸傍点]、恐くは帝國議會あつてより[#「恐くは帝國議會あつてより」に白丸傍点]、貴族院第一流の議長ならむ[#「貴族院第一流の議長ならむ」に白丸傍点]、統御の器あるに非ずして何ぞや[#「統御の器あるに非ずして何ぞや」に白丸傍点]。
忠忱の人
彼れは久しく貴族院に於ける硬派の首領たり※[#白ゴマ、1−3−29]第一期の議會以來彼は大抵政府の反對に立てり※[#白ゴマ、1−3−29]政府に反對するに非ずして藩閥に反對せるなり※[#白ゴマ、1−3−29]而も其進退動もすれば衆議院の非藩閥派と同うするものあるを以て、政府者の彼れを憎むや最も太甚し※[#白ゴマ、1−3−29]然れども彼れの藩閥を攻撃するは、衆議院の非藩閥派と其精神を異にせり※[#白ゴマ、1−3−29]蓋し衆議院の非藩閥派は[#「衆議院の非藩閥派は」に傍点]、政權爭奪を以て結局の目的と爲すと雖も[#「政權爭奪を以て結局の目的と爲すと雖も」に傍点]、彼は單に藩閥の情弊を打破して憲政の實を擧ぐるを中心の冀望と爲したればなり[#「彼は單に藩閥の情弊を打破して憲政の實を擧ぐるを中心の冀望と爲したればなり」に傍点]。
故に彼は一方に於ては藩閥を攻撃すると共に、一方に於ては又屡々衆議院の行爲を非難したりき※[#白ゴマ、1−3−29]前伊藤内閣の第四議會と衝突するや、紛爭に始まりて紛爭に終り、九旬の會期唯だ怒罵忿恚の聲を以て喧擾したるに過ぎざりき※[#白ゴマ、1−3−29]是れ他なし、内閣は常に輕佻驕傲にして責任を顧みず[#「内閣は常に輕佻驕傲にして責任を顧みず」に傍点]、常に袞龍の袖下に隱れて衆議院を威嚇せむとするあり[#「常に袞龍の袖下に隱れて衆議院を威嚇せむとするあり」に傍点]、衆議院は噪暴急激にして沈重なる思慮を缺き[#「衆議院は噪暴急激にして沈重なる思慮を缺き」に傍点]、動もすれば上奏權を假て内閣に逼らむとするあり[#「動もすれば上奏權を假て内閣に逼らむとするあり」に傍点]、其行動兩つながら極端に失して一點和協の意なければなり[#「其行動兩つながら極端に失して一點和協の意なければなり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]其結果として衆議院は内閣の處決を促がすと稱して自ら停會し、内閣は之れに酬ひんと欲して恐れ多くも詔勅の降下を奏請し奉る如き、殆ど共に大義名分の何物たるを知らざるものに似たりき※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは此事態を歎じて慨世私言を述べ、以て其機關雜誌に掲出せしめたり※[#白ゴマ、1−3−29]固より寥々たる短章に過ぎずと雖も、中に彼れが滿腹忠忱の情躍々として掬す可きものあり※[#白ゴマ、1−3−29]其内閣に對しては[#「其内閣に對しては」に傍点]、藩閥の情弊に拘泥して改善の實蹟なきを責め[#「藩閥の情弊に拘泥して改善の實蹟なきを責め」に傍点]、擧措の不親切にして眞面目ならざるを責め[#「擧措の不親切にして眞面目ならざるを責め」に傍点]、誠意誠心の毫も認む可きものなきを責め[#「誠意誠心の毫も認む可きものなきを責め」に傍点]、其衆議院に對しては[#「其衆議院に對しては」に傍点]、妄りに政府彈劾を事として紛然囂然たるを咎め[#「妄りに政府彈劾を事として紛然囂然たるを咎め」に傍点]、上奏權を濫用して[#「上奏權を濫用して」に傍点]、陛下を政海の渦中に誘ひ奉るの不敬を咎め[#「陛下を政海の渦中に誘ひ奉るの不敬を咎め」に傍点]、政府乘取の野心に驅られて國家民人の康福を度外視するを咎めたり[#「政府乘取の野心に驅られて國家民人の康福を度外視するを咎めたり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]忠忱の人に非ずして何ぞや。
第五議會の解散するや、彼れは其同志と共に伊藤首相に忠告書を贈りて、首相の反省を求めたり※[#白ゴマ、1−3−29]首相之れが復書を作りて相酬ゆるや、彼は更に辯妄書を公にして其謬見を指摘すること太だ痛切※[#白ゴマ、1−3−29]而して彼れを知らざるものは、此一事を以て單に
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