なやり方で生理を堰《せ》きとめてしまつた。少女たちが瘠せ細りながらも神経がやや脂肪づき、兎《と》に角《かく》卯薔薇《うばら》ほどの花になつて咲く年齢になつても、明子だけは依然色を失《な》くした蕁麻《いらくさ》として残つた。これには更に一つの理由として、彼女の心臓の弱さを附け加へることが出来る。
この不思議な退化をなしつつある少女は一つの稀《まれ》な才能を示すやうに見えた。それは彼女の素描にあらはれる特殊な線の感じに於《おい》て。素描の時間に助手の仕事をつとめることになつてゐた或る上級生が、明子のこの才能を愛した。彼女は明子を画家伊曾に紹介した。伊曾にとつてその上級生は画《え》の弟子であり、また情婦たちの一人でもあつた。
結果は思ひがけなかつた。伊曾を中心とする事件に於て、その上級生は明子のため硬度のより高い宝石と一緒の袋で遠い路《みち》を運ばれた黄玉《トパアズ》のやうに散々に傷《きずつ》いた。その挙句《あげく》、明子はこの上級生を棄《す》てた。
青いポアンといふ綽名《あだな》がこの少女の口から漏《も》れ、一群の少女たちの間に拡つたのはそれから間もないことだつた。その上級生の名は劉
前へ
次へ
全39ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
神西 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング