青いポアン
神西清

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)綽名《あだな》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)不具|乃至《ないし》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)屡※[#二の字点、1−2−22]《しばしば》
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     第一部

 明子は学校でポアンといふ綽名《あだな》で通つてゐた。ポアンは点だ、また刺痛だ。同時にそれが、ポアント(尖《さき》、鋭い尖)も含めて表はしてゐることが学校仲間に黙契されてゐた。特に彼女の場合、それは青いポアンであつた。
 明子はポアンといふ名に自分の姿が彫り込まれてゐるのに同感した。のみならず、この綽名を発見した或る上級生に畏怖《いふ》に似た感情を抱かずには居られなかつた。同時に敵手ともして。
 ――あの子は硬い一つのポアンよ。
 その上級生が或るとき蒼《あお》ざめて学友に言つた。そして色については次の様に言ひ足した。
 ――しかも青いポアンだわ。
 学友たちはどうしてこの少女が蒼ざめたのか知らなかつた。
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