穴《あな》の中《なか》に投《とう》じられて了《しま》ふのです。』
『では來世《らいせい》は。』
『何《なに》、來世《らいせい》。戯談《じやうだん》を云《い》つちや可《い》けません。』
『貴方《あなた》は信《しん》じなさらんと見《み》えるが私《わたし》は信《しん》じてます。ドストエフスキイの中《うち》か、ウオルテルの中《うち》かに、小説中《せうせつちゆう》の人物《じんぶつ》が云《い》つてる事《こと》が有《あ》ります、若《も》し神《かみ》が無《な》かつたとしたら、其時《そのとき》は人《ひと》が神《かみ》を考《かんが》へ出《だ》さう。で、私《わたくし》は堅《かた》く信《しん》じてゐます。若《も》し來世《らいせい》が無《な》いと爲《し》たならば、其時《そのとき》は大《おほ》いなる人間《にんげん》の智慧《ちゑ》なるものが、早晩《さうばん》是《こ》れを發明《はつめい》しませう。』
『フヽム、旨《うま》く言《い》つた。』
と、アンドレイ、エヒミチは最《い》と滿足氣《まんぞくげ》に微笑《びせう》して。
『貴方《あなた》は然《さ》う信《しん》じてゐなさるから結構《けつこう》だ。然云《さうい》ふ信仰《しん
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