んざい》! 正義《せいぎ》萬歳《ばんざい》!』
『何《なに》を那樣《そんな》に喜《よろこ》ぶのか私《わたくし》には譯《わけ》が分《わか》りません。』と、院長《ゐんちやう》はイワン、デミトリチの樣子《やうす》が宛然《まるで》芝居《しばゐ》のやうだと思《おも》ひながら、又《また》其風《そのふう》が酷《ひど》く氣《き》に入《い》つて云《い》ふた。
『成程《なるほど》、時《とき》が來《く》れば監獄《かんごく》や、瘋癲病院《ふうてんびやうゐん》は廢《はい》されて、正義《せいぎ》は貴方《あなた》の有仰《おつしや》る通《とほ》り勝《かち》を占《し》めるでせう、然《しか》し生活《せいくわつ》の實際《じつさい》が其《そ》れで變《かは》るものではありません。自然《しぜん》の法則《はふそく》は依然《いぜん》として元《もと》の儘《まゝ》です、人々《ひと/″\》は猶且《やはり》今日《こんにち》の如《ごと》く病《や》み、老《お》い、死《し》するのでせう、甚麼立派《どんなりつぱ》な生活《せいくわつ》の曉《あかつき》が顯《あら》はれたとしても、畢竟《つまり》人間《にんげん》は棺桶《くわんをけ》に打込《うちこ》まれて、
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