ふけつき》のことなどに就《つ》いて、彼《かれ》は頗《すこぶ》る異議《いぎ》を有《も》つてゐたが、其《そ》れと打付《うちつ》けて云《い》ふのも、院長《ゐんちやう》に恥《はぢ》を掻《か》かせるやうなものと、何《なん》とも云《い》はずにはゐたが、同僚《どうれう》の院長《ゐんちやう》アンドレイ、エヒミチを心祕《こゝろひそか》に、老込《おいこみ》の怠惰者《なまけもの》として、奴《やつ》、金計《かねばか》り溜込《ためこ》んでゐると羨《うらや》んでゐた。而《さう》して其後任《そのこうにん》を自分《じぶん》で引受《ひきう》け度《た》く思《おも》ふてゐた。
(九)
三|月《ぐわつ》の末《すゑ》つ方《かた》、消《き》えがてなりし雪《ゆき》も、次第《しだい》に跡《あと》なく融《と》けた或夜《あるよ》、病院《びやうゐん》の庭《には》には椋鳥《むくどり》が切《しき》りに鳴《な》いてた折《をり》しも、院長《ゐんちやう》は親友《しんいう》の郵便局長《いうびんきよくちやう》の立歸《たちか》へるのを、門迄《もんまで》見送《みおく》らんと室《しつ》を出《で》た。丁度《ちやうど》其時《そのとき》、庭《に
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