外《そと》を歩《ある》く。病院《びやうゐん》に來《き》てより間《ま》もなく、代診《だいしん》のセルゲイ、セルゲヰチとも、會計《くわいけい》とも、直《す》ぐに親密《しんみつ》になつたのである。下宿《げしゆく》には書物《しよもつ》は唯《たゞ》一|册《さつ》『千八百八十一|年度《ねんど》ヴインナ大學病院《だいがくびやうゐん》最近《さいきん》處方《しよはう》』と題《だい》するもので、彼《かれ》は患者《くわんじや》の所《ところ》へ行《い》く時《とき》には必《かなら》ず其《そ》れを携《たづさ》へる。晩《ばん》になると倶樂部《くらぶ》に行《い》つては玉突《たまつき》をして遊《あそ》ぶ、骨牌《かるた》は餘《あま》り好《この》まぬ方《はう》、而《さう》して何時《いつ》もお極《きま》りの文句《もんく》を可《よ》く云《い》ふ人間《にんげん》。
 病院《びやうゐん》には一|週《しう》に二|度《ど》づつ通《かよ》つて、外來患者《ぐわいらいくわんじや》を診察《しんさつ》したり、各病室《かくびやうしつ》を廻《まは》つたりしてゐたが、防腐法《ばうふはふ》の此《こゝ》では全《まつた》く行《おこな》はれぬこと、呼血器《き
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