》では其《そ》れが爲《ため》に醫員《いゐん》を一人《ひとり》増《ま》す事《こと》と定《さだ》められた。で、アンドレイ、エヒミチの補助手《ほじよしゆ》として、軍醫《ぐんい》のエウゲニイ、フエオドロヰチ、ハヾトフといふが、此《こ》の町《まち》に聘《へい》せられた。其人《そのひと》は未《ま》だ三十|歳《さい》に足《た》らぬ若《わか》い男《をとこ》で、頬骨《ほゝぼね》の廣《ひろ》い、眼《め》の小《ちひ》さい、ブルネト、其祖先《そのそせん》は外國人《ぐわいこくじん》で有《あ》つたかのやうにも見《み》える、彼《かれ》が町《まち》に來《き》た時《とき》は、錢《ぜに》と云《い》つたら一|文《もん》もなく、小《ちひ》さい鞄《かばん》只《たゞ》一個《ひとつ》と、下女《げぢよ》と徇《ふ》れてゐた醜女計《みにくいをんなばか》りを伴《ともな》ふて來《き》たので、而《さう》して此女《このをんな》には乳呑兒《ちのみご》が有《あ》つた。彼《かれ》は常《つね》に廂《ひさし》の附《つ》いた丸帽《まるばう》を被《かぶ》つて、深《ふか》い長靴《ながぐつ》を穿《は》き冬《ふゆ》には毛皮《けがは》の外套《ぐわいたう》を着《き》て
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