こ》の小都會《せうとくわい》に於《おい》てのみ見《み》るのである。即《すなは》ち此所《こゝ》の市長《しちやう》並《ならび》に町會議員《ちやうくわいぎゐん》は皆《みな》生物知《ゝまものし》りの町人《ちやうにん》である、であるから醫師《いし》を見《み》ることは神官《しんくわん》の如《ごと》く、其《そ》の言《い》ふ所《ところ》を批評《ひゝやう》せずして信《しん》じてゐる。例《たと》へば、溶解《ようかい》せる鉛《なまり》を口《くち》に入《い》るゝとも、少《すこ》しも不思議《ふしぎ》には思《おも》はぬであらう。が、若《も》し是《これ》が他《た》の所《ところ》に於《おい》ては如何《どう》であらうか、公衆《こうしゆう》と、新聞紙《しんぶんし》とは必《かなら》ず此《かく》の如《ごと》き監獄《バステリヤ》は、とうに寸斷《すんだん》にして了《しま》つたであらう。
『然《しか》し其《そ》れが奈何《どう》である。』
と、彼《かれ》はパツと眼《め》を開《ひら》いて自《みづか》ら問《と》ふた。
『防腐法《ばうふはう》だとか、コツホだとか、パステルだとか云《い》つたつて、實際《じつさい》に於《おい》ては世《よ》の中
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